気まぐれ通信No.8 無関心をやめ! 考え! 発言しよう!

リスクを承知で、「無関心をやめよう! 考えよう! 発言しよう!」と呼びかける人たちがいます。

A4の通信を書いています。宜しければご覧ください。
通信版PDFは下のリンクからダウンロードできます。

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50年での変化?

 黒人差別に限らず、あらゆる差別に対する抗議運動は、多数の反対する者によって押し潰され、さらに膨大な数の無関心な者によって無いものにされて来ました。差別と闘う人たちは少数であり、発言する機会も影響力も限られていました。その結果、50年前にはオリンピックの表彰台での無言のパフォーマンスは、オリンピック憲章に違反するとして「公式」に非難され、罰せられました。
 でも、今は状況が変わって来たように思います。

誰もが発信できる時代

 今は、抗議の声を多くの人に届けるために表彰台のような特別な舞台は必要ありません。SNSは誰でもが全世界に向けて発信できる機会を提供しました。ただし、発信した内容に対しての反論も自由です。多くの批判や誹謗中傷も返ってくる可能性もあります。
 しかし、少なくとも特別な機会を手に入れなくとも発信することができ、それを止められることはないのです。これは、差別と闘う人たちには大きな力になると思います。

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強い意志を持った若者たち

 ビリー・アイリッシュの6,700万人フォロワーに向けての痛烈なメッセージは、誰にも止めることはできません。ただし、ビリーに対して様々な意見が返ってくることは、発信者のビリー自身がよく知っています。それも承知の上で、自分の発言の影響力の大きさも承知の上であえて発信しているのがビリー・アイリッシュなのです。そうしたところもビリー・アイリッシュの魅力なのかもしれません。

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 スポーツ選手の政治的発言やパフォーマンスに対して厳しい批判が返ってくる歴史や現状を周知している大坂なおみは、よく考えられた方法で多くの人たちに「考えて!」「話し合って!」とアピールし、インタビューにも賢く答えました。

忖度して沈黙する人たち

 全米オープンの前に「タイム」の対談で大坂なおみは、
「アスリートはどんな時であれ発言をするたびにスポンサーを失うのではないかと恐れていると思います。私の場合、スポンサーのほとんどが日本企業ですので、まさにそうです。彼らは、わたしの話していることについて理解がなかったり、動揺することもあるかもしれません。でも何が正しいのか、何が重要なのかを話さなければならないと感じる時は来ると思います。」と語っていました。

 大坂なおみの17のスポンサー企業に、黒いマスクのパフォーマンスに対してコメントを求めた記事を見つけました。

 返答があった7社のうち、彼女の行動に対する明確な見解を示したのはヨネックスだけでした。「スポーツに国境や人種差別はあってはならず」「大坂選手の行動はわたしたちの基本姿勢と通ずるものであると考えており、当社はその行動を尊重します。」と踏み込んで言及しました。
 その他の企業は、「コメントする立場にない」「見解はない」「彼女の勇気ある行動を尊重」など、人種差別などに関してコメントすることに躊躇するものばかりでした。スポンサーも消費者が離れないかと恐れているのでしょう。
 とりあえず、スポンサーが大坂なおみを非難していないことに安心しました。彼女のよく考えられたパフォーマンスとインタビューの成果でしょう。

 一方、日本のトップアスリートが沈黙しているのも気がかりです。彼女の行動に意見を発信している人が見つかりません。災害復興や慈善事業などには積極的になってきた日本のトップアスリートが、どうして人権や人種差別などについては発言が少なくなるのでしょう。スポンサーへの忖度? 東京オリンピックも近いので配慮して? それとも人種差別は関係ないと考えている?

沈黙は差別を肯定する

 世界で活躍するビリー・アイリッシュ大坂なおみの二人を取りあげてきました。無鉄砲なのではなく、批判も状況も理解した上で、黙っているのではなく、自分が正しいと信じることを世界に向けて発言しました。強い意志を持って発信する若い二人のリーダーの存在だけでもこの50年間の大きな変化を感じます。

 そして、「より多くの人がこの事を語るきっかけに」「今、この瞬間にみんなで話し合うべき」と言葉は違うけれども、二人が呼びかけているのは無関心をやめ、話し合い、みんなで声をあげることです。
 差別する者より、批判する者より、無関心で沈黙する者が遥かに多く、その多くの沈黙が差別を許し、結果的に差別を肯定するのだと思います。
 昔、ニクソンは、サイレント・マジョリティ(声高な発言をしないアメリカ国民の大多数)は、ベトナムからの即時全面撤退を求めていない」と言いました。沈黙は肯定とみなされるのです。

 無関心をやめ、考え、発言しよう!